もぞらもぞら

東北のもぞもぞする話題を考察

トリプルCプロジェクト頓挫で求められる亘理町の姿勢

(ワタリ・トリプルC・プロジェクトのブレスリリースより)

亘理の海からパリ五輪へ

4月27日、仙台港でサーフィンの「ジャパンオープン」が開催されました。この大会は、パリ五輪予選にあたるワールドゲームズの代表選考会を兼ねているそうで、代表枠6人の中に松田詩野さんも選ばれました。(参照:仙台放送ニュース)

 

リンク先のニュースでは触れられていませんが、松田さんは宮城県亘理町が立ち上げた「ワタリ・トリプルC・プロジェクト」の初代メンバーで、言うなれば亘理町に、そして宮城県にゆかりのある女性です。そんな松田さんがパリ五輪サーフィン競技の予選大会に出場を決めたわけですから、私も県民として応援せずにはいられません。(追記/後日松田さんのパリ五輪出場が正式に内定しました)

亘理町「荒浜・鳥の海」活性化

ワタリ・トリプルC・プロジェクトは津波で被災した荒浜地区の地域活性化事業です。亘理町が2020年12月に策定した同地区の将来構想「WATARI TOWN BAY AREA CONCEPT」をもとに、翌21年1月に公募型プロポーザルで事業者が選定され、2件の応募の中からワンテーブル(多賀城市)が選ばれました。

 

ちなみに、町はWATARI TOWN BAY AREA CONCEPTの策定を前に荒浜地区で需要調査を行っていて、それを請け負ったのがワンテーブルでした。またさらにさかのぼる20年2月には、町とワンテーブルが「いぎなり☆ぶっちぎりの沿岸部をつくるパートナーシップ協定」を結んでいます。

若者文化と「地域おこし」の融合

こうして21年4月、ワタリ・トリプルC・プロジェクトを受託したワンテーブルは、荒浜・鳥の海エリアの施設運営業務と、地域おこし協力隊の活用業務の事業主体となりました。活動に参加する若者たちの募集告知には同社の島田昌幸社長や各界の著名人がプロデューサーとして名を連ね、1カ月の募集期間に定員の約4倍もの応募があったと言います。

 

同年6月にはオーディションによって選ばれたメンバー30人が決定し、音楽やアート、スポーツなどさまざまなジャンルで活躍する若者たちが、ワンテーブルを通じて亘理町の地域おこし協力隊員に委嘱されました。海沿いのまちだけにサーフィンによるイメージアップも期待され、初年度のメンバーには松田さんなど男女3人のプロサーファーも含まれています。

道半ばで破綻した「防災から文化」

「防災から文化を創り出す」をテーマに、津波被災地の交流人口拡大と地域経済の活性化をめざしてスタートしたワタリ・トリプルC・プロジェクト。ところが肝心のワンテーブルが進めるはずだった主要事業の多くが遅れたり未着手のままとなり、議会では町の対応に関する疑問や批判の声が上がっていました。

 

一連の問題を取り上げた河北新報の報道もあり、今年3月、亘理町はついに協定を解約。プロジェクトは事実上頓挫する形となりました。報道によるとワンテーブル側は、世界情勢による物価高騰などで事業の見通しが立たなくなったと町に説明したということで、互いに協議のうえ解約に合意したとされています。

 

亘理町の山田周伸町長は広報誌で、プロジェクトに関する町の財政負担はなかったとしたうえで、備蓄用ゼリーの配布や高規格救急車の導入など「部分的ながら成果はあった」と強調しましたが、町民がどの程度納得するのかは疑問です。国見町と同じように住民説明会を開くなど、町民の声を直接聞こうとする姿勢は必要ではないでしょうか。

残された地域おこし協力隊に支援を

プロジェクト破綻の詳細については後日あらためて取り上げたいと思いますが、何より心配なのは現在活動している地域おこし協力隊員の皆さんです。亘理町が処遇などそのままの条件で引き継ぐということですが、移住して下さった皆さんの思いを無駄にしないよう、町にはあたたかいサポートをお願いしたいと思います。

 

(広報わたりより 山田町長「(プロジェクトは)部分的ながら成果はあった」)