もぞらもぞら

東北のもぞもぞする話題を考察

国見町の高規格救急車研究開発は架空事業だったのか?

※KFB福島放送のニュースより

リース事業頓挫で一転「無償譲渡」へ

「疑惑の救急車」で揺れる福島県国見町。企業版ふるさと納税による寄付金約4億3200万円を原資に町がリース事業を展開する予定だった〝高規格救急車〟12台は、計画の頓挫で一転、希望する自治体などに無償で譲渡されることになりました。

 

地元の福島県伊達地方消防本部には、このうち2台が寄贈されました。引渡式の様子を報じたKFB福島放送は、「行き場を失くした救急車」と皮肉をこめた表現で、この寄贈が単なる美談ではないことを伝えています。

 

一方、岩手県遠野消防本部には先月、国見町から〝高規格救急車〟1台が寄贈されました。取材した地元のケーブル局・遠野テレビは、管内での救急件数が2011年以降、毎年1,000件を超える状況にあるとして、新たな救急車の活躍に期待が寄せられる事情を伝えました。

百条委の証人喚問が終了

こうしたなか、国見町では先月下旬、町議会が立ち上げた百条委員会による関係者への証人喚問が終了しました。

 

百条委員会とは、地方自治法 100条によって規定された調査特別委員会の通称で、引地真町長が第三者委員会に託した町主導の調査とは別に、議会主導で設置されたものです。

 

百条委員会の調査範囲はあくまでも「自治体の事務」に限られるものの、関係者に出頭や証言を求めたり、記録の提出などを請求できるうえ、相手が正当な理由なしに拒めば、禁錮または罰金に処すこともできる「強い権限」を与えられています。

 

国見町の問題が明るみに出て以降、私もこのブログを通じてたびたび百条委員会の設置を求めてきましたが、いざ委員会が立ち上がったあとは、その動向を静観するだけに留めていました。たとえ取るに足らないこのようなブログでも、専門家でない私が委員会の調査中に予断を挟むべきではないと考えたからです。

期待以上だった百条委

これはあくまでも報道を見たり地元の方から聞いたりした印象ですが、国見町の百条委員会は期待以上の力を発揮したのではないでしょうか。去年11月から今年3月までの間に10人への証人喚問を行い、ほかに5人を参考人招致、さらに3人に聞き取りを実施。その結果、計18人から「証言」を得たのは大きな実績です。

 

この中には2度に渡って証人喚問が実施された引地町長や、受託者のワンテーブル前社長の発言も含まれるほか、企業版ふるさと納税をめぐる背景や仕様書が作成された経緯なども述べられています。

新事実が次々明るみに

一連の調査によって新たに明らかになった事実も少なくありません。例えば、企業版ふるさと納税の根拠となる「国見町地域再生計画」には「救急車事業」の記載がなく、その計画策定に携わった当事者が「救急車開発を想定していなかった」と認めたこと。

 

町が救急車の製造にあたって「新たに開発した」と主張する設備が実は既成品で、救急車を製造したベルリングの前社長も「ベース車両にこれまであったものを設置しただけ」とする、つまりは「開発」そのものがなかったと受け取れる証言をしたこと。

 

さらに国見町の職員が、交流サイト(SNS)を通じて、プロポーザル公募に関する「決裁前の文書」などをワンテーブル側に見せていたこと、などなど、挙げればきりがないほどです。

百条委の判断はいかに

調査の過程で、「高規格救急車研究開発事業」と題された予算約4億3200万円の一大事業が、実態は「高規格」すら怪しく「研究開発」などしていなかった「架空の事業」だった可能性も浮上したわけで、6月までに報告書をまとめるとしている百条委員会の今後の判断が注目されます。

 

一方、証人喚問で町職員と業者側とのやりとりについて「承知していない」「持ち帰って精査する」と述べた引地町長は、約半年後に自身の任期満了を控え、次の町長選挙が迫っています。

 

今後、町側が調査を託した第三者委員会からも報告書が示されるものと思いますが、いったいどのような結論になるのか。さすがに、万が一にも、引地町長にとって「お手盛り」の報告書にはならないと思うのですが、果たして。