もぞらもぞら

東北のもぞもぞする話題を考察

空き地で済むようなものにスカイツリー並みの予算を投じられるほど富める県みやぎ

東京スカイツリー並みの建設費

災害時の活用イメージ(宮城県のウェブサイトより)

11月22日の河北新報によると、当初295億円とされた宮城県広域防災拠点の総事業費は、増額に増額を重ねるマシマシ状態となり、ついに4割強増しの422億円まで膨らむ見込みとのこと。おもな財源には国の交付金などが充てられるものの、県の持ち出し分も増えるとみられ、11月27日の会見で村井知事は、これまでの153億円から204億円に県の負担が増える見通しを明らかにしたそうです。※1

 

この事業、これまでに工期も再三延長されて、2020年度だった完成予定は32年度に。もはや宮城県民は、大阪・関西万博の「350億円リング」を無駄遣いなどと批判できなくなりました。いや、万博なら入場料などの収入があり、地域経済への波及効果も期待できますが、こちらは将来にわたって維持管理費がかさむだけの「夢も希望もない」未来となる恐れすらあります。

 

もっともだからといって私は、宮城に広域防災拠点が不要だと言っているわけではありません。むしろ一日も早く整備すべきと思っています。なぜなら明日どんな災害が起きるかもわからないからです。ただ、そこに422億円という東京スカイツリー(本体建設費約400億円)並みの莫大なコストや、着手から20年という気の遠くなる期間を要するのがおかしい、愚策だと、言いたいだけです。

広い空き地で済むものが一大事業に

そもそも、広域防災拠点とはどのようなものでしょう。じつは明確な法的根拠や定義は無いそうですが、役割としては、災害が発生した際に県内外からの救援隊や支援物資の受け入れ、集積、分配などを広域的に行う拠点とされています。

 

小泉政権当時の2001年に国が都市再生プロジェクトの一環として基幹的防災拠点の考えを示し、03年には消防庁が広域防災拠点のあり方に関する報告書をまとめました。これらが広域防災拠点を考えるうえでのロールモデルになったと言われています。

 

いわゆる避難施設やシェルターなどとは異なるもので、ざっくり言うと、広い空き地と保管倉庫、それに駐車場やヘリポートなどがあれば十分です。基本的には大掛かりなハコモノは必要ありません。

災害時の活用イメージ(宮城県のウェブサイトより)

つまり、平時には憩いの公園として、災害時には救援・支援の基地として機能する「広大な空き地」さえあれば、広域防災拠点は成立するともいえるのです。では、なぜそのような広い空き地で済むようなものに、宮城県は422億円というケタはずれな予算と約20年もの事業期間を投じる必要があるのでしょうか。

リスク無視の用地選定と玉突き工事

そのカギとなるのが広域防災拠点の「用地選定」と「玉突き工事」です。宮城県は震災から2年後の2013年に検討会議を立ち上げ、仙台市宮城野区宮城野にある「JR仙台貨物ターミナル」を別の場所に移してもらい、その跡地17ヘクタールを整備用地として取得する方針を決めました。

 

流れとしては、まず移転先の土地を造成し→貨物ターミナルをそちらへ移転させ→その跡地に広域防災拠点を整備する…という、いわゆる「玉突き工事」です。そして2014年には早々と、県とJR貨物の間で138億円の土地の売買契約が結ばれました。※2

広域防災拠点イメージ(宮城県のウェブサイトより)

一方、貨物ターミナルの移転先に選ばれたのは、現在の場所から約5km離れた宮城野区岩切にある広大な農地です。近くにはJR貨物の仙台総合鉄道部もある、いわばJR側にとって好適地といえる場所ですが、農地だけに地盤が緩く、水がたまりやすいなどの問題があります。そのため造成には、地盤改良や水ハケ対策などが必要となり、当初の計画とずれが生じることになりました。

 

移転先の造成工事が延びるということは、そのまま移転の遅れにつながり、移転が進まないかぎり当然ながら広域防災拠点の本格工事も始まらないので、防災拠点の完成時期が遅れます。そこへさらに世界情勢などの影響で、工事に関する人件費や資材価格の高騰が重なりました。

 

貨物ターミナルの移転が、土地収用法上の「公共補償」に該当することも予算が膨らむ一因となっています。一般的な民有地の取得であれば、県は土地代など相手側の損失分を補償するだけですが、今回は公共施設の移転となるため、県は従来の貨物ターミナルの機能を回復する責務を負わされます。それにより、JR側の自己負担分とは別に、県の負担が発生し、仮にその費用が膨らめば、県の費用負担も増えるのです。

増額分の大半はJR貨物のために

こうして、当初の見込みより増額となる127億円のうち116億円が、広域防災拠点とは実質無関係の、JR貨物という「一民間企業のために」使われることになりました。言うまでもなく、138億円で契約した宮城野の「土地代とは別に」です。もちろんそれが法律で決まっていると言われれば、そうなのかもしれません。

 

しかし、こうなるリスクは土地の売買契約以前に十分想定できたはずで、はじめから公共施設ではなく民有地を選んでさえいれば、必要のなかった負担です。さらに言うなら、玉突き工事を考慮しなくていい土地を選んでおけば、工期が延びるリスクも軽減できました。こうしたリスクを無視して立てられた事業計画に、そもそもの甘さがあったということです。

問われる「規模」の妥当性

震災後、今回のように予算が膨らんだり完成が遅れるケースは、各地の復旧・復興工事でもたびたび起きました。ただ当時は復興事業が一斉に動き出したので「仕方のないこと」と、受け入れなくてはならない背景がありました。そして何よりも、県民の安全・安心を確保するために、一日も早く事業を進める必要に迫られていました。

 

しかし、広域防災拠点は「なくては困る」ものではなく「あったほうがいい」レベルの施設です。その必要性の低さをまさに現在の状況が裏付けているわけで、「着手から20年かかろうと、のんびり造ればいいや」という県の姿勢に表れています。

 

加えて宮城野という土地は「長町−利府断層帯」という活断層に近い問題も抱えています。万が一の場合には液状化の恐れがあることから、県議会でも早くから疑問の声がありました。また、近隣の道路整備も追いついておらず、何よりここまで広大な規模が必要なのかどうか、その妥当性については疑問が残ります。同じ震災被災地である、お隣の岩手県を見ると、その疑問はますます色濃くなります。

岩手の予算は宮城の1/100以下

2013年 岩手県の達増知事が当時の安倍総理に提出した要望書

岩手県は広域防災拠点について、「何よりも早期に防災体制を確立する必要がある」としたうえで、「必要最小限のコスト」にこだわり、「県内にある既存施設の活用」を前提としました。

 

そのうえで、達増知事は要望書に「備蓄倉庫や通信設備など新たな施設や設備の整備も必要」として「全体事業費として1~3億円程度と試算」と記しています。同じ広域防災拠点でありながら、宮城県の事業予算の100分の1以下です。

 

その結果、岩手県は県内5つのエリアに、公園や体育館、工場などを活用した29施設を分散で整備し、既に運用を始めています。年間維持費は、備蓄食料の補充や更新などが中心で、全体でも2千万円程度に収まっており、今後は沿岸部にも整備する方針です。

「富」よりも「希望」に感じる誠

国の金だから遠慮なく使って時間がかかろうと大掛かりなものを造ろうとするのか、公金の負担を少しでも減らし一日も早く県民の安全・安心を確保しようとするのか。立場によって受け止め方は違うのかもしれませんが、私は後者に正義を感じます。ましてやそれが、復興特別税など国民に負担を強いて得られた浄財であるならばなお、感謝を込めてつつましく使うのが、被災地に生きる人間の矜持だと思います。

 

「富県みやぎ」のトップと、「希望郷いわて」のトップの哲学の差かもしれませんが、広域防災拠点に関しては、私は「富」よりも「希望」に誠があると感じています。

パブリックコメントを実施中

宮城県は、広域防災拠点の整備が採択から10年を過ぎてなお継続となることから11月22日、行政評価委員会に事業継続の妥当性を諮問しました。またこれに合わせて、県民から意見を募る「パブリックコメント」が12月21日まで実施されていて、県のウェブサイトから書き込めます。

 

ちなみに、県が公表している令和5年度の公共事業再評価調書では、広域防災拠点の費用対効果に関する評価が、なぜかB/C1.73→2.63にハネ上がっています。当然、なにか根拠があってのことなのでしょうし、内輪のお手盛りではないと信じていますが、行政評価委員会にはくれぐれも公正な判断をお願いしたいと思います。

 

(※1 …11/27 情報が更新されたので一部追記しました)

(※2…2023年4月27日 第211国会 東日本大震災復興特別委員会より)

村井知事は暴走列車?高まる「4病院再編」への批判 国の方針を選挙公約にした不思議

県民から不評の「4病院再編構想」

 

「移転ができなければ辞職する」

このところ、報道から伝わる宮城県村井嘉浩知事の振る舞いが、やや荒れているように思われます。県が主導する仙台医療圏の4病院再編構想の進捗に遅れが目立つせいかもしれません。

 

先月31日には、県精神保健福祉審議会の会合に村井さんが乗り込み、名取市の県立精神医療センターを富谷市に移転させる代わりに、民間の精神科病院を誘致する考えを打ち出しました。しかしその場にいた委員からは異論が噴出したということです。

 

河北新報によると、「村井知事は『まずやらせてほしい。だめなら別の手を考えるが、結果として(移転が)できなければ、白旗を揚げて知事を辞職する』と迫ったが、委員の1人は『知事の進退は関係ない』と鼻白んだ」とのこと。さらに村井知事は、「『どのような意見が出ても私の考えに変わりはない。私を止めることができるのは県議会だけだ』」と、態度を硬化させたとしています。

 

「だめなら辞める」「いやならクビにしてくれ」 村井さんは前々からよくこうした言葉を使います。このように覚悟を示すことは政治家同士の交渉なら有効なのかもしれませんが、今回の相手は精神科医療や福祉の現場に詳しい専門家たちです。勢いに任せたような発言はむしろ空疎に響き、不信感を抱かせた可能性さえあります。

選挙公約にした4病院再編構想

名取市の県立精神医療センターと青葉区にある東北労災病院を富谷市明石台に移転・合築(併設)し、名取市の県立がんセンターと太白区にある仙台赤十字病院を一つに統合して、名取市植松に新たな病院として設置しようとする4病院再編構想。

 

村井さんが2年前の知事選で5期目の選挙公約に掲げたことで、4病院再編構想は広く県民に知れ渡りました。知事選では構想に反対する新人候補を圧勝で下しましたが、その後の進展では村井さんが苦戦を強いられている形です。

村井よしひろオフィシャルウェブサイト(2021)より引用

再編の対象となった医療機関の地元では、詳しい説明も無しに構想が立てられたことに批判の声が止みません。住民や患者、病院職員などの団体は県に計画の白紙撤回を求め、仙台市郡和子市長も知事の強引ともいえる姿勢に首を傾げています。

「精神医療への無理解」

とくに厳しい声が寄せられているのが、県立精神医療センターの富谷市への移転案です。センターと、周辺のクリニックやグループホーム、就労支援施設などが長い時間をかけて築き上げてきた「地域包括ケア」の基盤が、移転によって崩壊する恐れがあるからです。地域で支えてきた患者の生活が成り立たなくなるかもしれません。

 

民間の精神科病院で構成する県精神科病院協会は、「県が精神科医療の実情についてあまりにも無理解」だと批判したうえで、県立精神医療センターは名取市内に建て替え、新たな精神科病院は富谷市に誘致すべきとしています。詳細をみると、こちらのほうが現実的なプランに感じるのは私だけではないと思いますが、県はかたくなに提案の受け入れを拒んでいるようです。

地域医療構想と公立病院の経営強化

それにしてもなぜ村井さんは、4病院再編を選挙公約にしたのでしょう。ひょっとして何か自分の手柄にできそうな匂いを感じ取ったのでしょうか。私はこの問題がここまでこじれてしまったのは、国の方針を村井さんが独自の案のように選挙公約にしたことにも一因があると思っています。

 

4病院再編構想の下敷きとなっているのは、国の「地域医療構想」です。地域医療構想とは、厚生労働省が全国の都道府県に対し、少子高齢・人口減少などが深刻となる2040年の医療需要を見据え、医療施設の適正配置を促しているもので、実施のタイムリミットは再来年とされています。

 

ただし、精神科病床や感染症病床などは地域医療構想に含まれておらず、県立精神医療センターは対象外となります。

4病院再編構想のベースは国の医療施策

一方、総務省が進める「持続可能な公立病院経営の強化プラン」では、公立病院の独立行政法人化(職員の非公務員化)や、指定管理者制度の導入(運営の外部委託)などを含めた新たな経営方針を今年度中に策定するよう求めていて、こちらは県立である精神医療センターも対象に含まれます。

 

いずれも達成に向けた基金や、財政支援、財政措置など国のインセンティブが用意されているので、老朽化が著しい病院の建て替えを進めるには絶好の機会と言えるかもしれません。

公約実現の責任と県民への説明責任

これは想像ですが、「地域医療構想」と「公立病院経営の強化プラン」という国の2つの枠組みを同時期に利用すれば、県や各病院の負担を抑えつつ、4つの病院を2つの市に再配置できると考えたとしてもおかしくありません。

 

そのうえ再編されるのは県立と労災、赤十字という、それぞれ全く経営母体の異なる、しかも規模の大きな病院です。これなら確かに独自性もありますし、選挙公約としたうえで実現できれば対外的なインパクトも大きいでしょう。

 

とはいえ、県立精神医療センターは地域医療構想に含まれないため、東北労災病院とは統合できず、あくまでも併設となり、病院設置者が別々の状態でどの程度の再編効果が見込まれるのかは未知数です。

 

それでももし、村井さんが最初から県民への説明責任を果たそうと細かい努力を積み重ねていたなら、現在のような混乱は避けられたのかもしれません。しかしそれを選挙公約にしたことで、国から示された期限に加え自身5期目の任期も重なり、村井さんとしては引くに引けない状況にあるのかと思います。

村井知事はどこを向いているのか

私は村井さんは優秀な知事だと感じていますし、人柄の良さも知っています。震災後の宮城県の復興が順調に進んだのも村井さんだからこそできたことだと思っています。

 

ところが、水道民営化と騒がれたコンセッションや、県美術館の移転騒動、さらにはサン・ファン号の解体、宿泊税の検討など、ここ数年の村井県政には納得できない部分も少なくありません。それが政府の要請なのか、あるいはコンサルの入れ知恵なのかは分かりませんが、村井さんはいったいどこを向いているのでしょうか。

歩を緩め立ち止まる姿勢を

「村井知事は宮城出身じゃないからだめだ」「このままでは宮城を売られてしまう」「全国初と付けば何でも手を挙げる」「ブレーキの壊れた暴走列車みたいだ」などなど、私が気づいただけでも村井さんへの厳しい批判を声に出す人は増えてきたように思われます。

 

村井さん、このあたりで一度、歩を緩めてみてはいかがですか。ほんのひととき立ち止まり、県民とひざを突き合わせ、丁寧な説明を試みるためです。それは決して無駄な時間ではなく、まして今からでも遅くはないと私は思います。

 

※9/16「地域医療構想と公立病院の経営強化」以下の内容を加筆しました。

国見町×ワンテーブル=「疑惑の救急車12台」 町側のずさんな事業計画に監査委員が激おこ!

完成した救急車はどこへ向かうのか(画像・Google )

監査委員が異例の批判

人口8000人の福島県国見町が、企業版ふるさと納税で寄付された約4億3200万円を原資に高規格救急車12台を研究開発し、全国にリース事業を展開しようとして頓挫した、いわゆる「疑惑の救急車」問題について、町の監査委員が異例ともいえる厳しい表現で町側の事業計画を批判しました。

 

これは国見町の2022年度各会計決算を審査した監査委員が、A4版10ページあまりの審査意見書の中に示したもので、文書の半分に迫る4ページ約6,000文字を救急車事業への批判に割いています。

ずさんな事業計画

意見書ではまず救急車事業が、4億円を超える事業でありながら、監査委員が町側に説明を求めたところ「事業計画書が作成されていませんでした」と明かし、議会に対する説明も「すべて口頭のみで行った」と、町側のずさんな事業計画を暴露。「説明資料なしで、どのように庁内の意思疎通を図られたのでしょうか。町民へどのように説明したのでしょうか」と、出だしから町側の姿勢を突き放しています。

研究開発方針の矛盾

次に研究開発について、「同じ仕様書で、12台も製造する必要があったのか」と疑問を呈し、「研究開発事業の名称を掲げている以上、」「例えば、A仕様で4台、B仕様で4台、C仕様で4台とすれば、採用枠も広がるし、幅広く意見を求めることができます」と、ていねいに具体例を挙げて町側の研究開発方針の矛盾を指摘。

 

「1回意見を聞いて、6台作り、1年使用していただいて、さらに2回目の意見を聞いて、6台作れば、1回目より2回目は良いものを作れる可能性があり、より質の高い開発が期待できるのではないか」と、町側の考えが浅いとばかりにたたみ掛けています。

「あまりにも乱暴で無責任」

12台という救急車の台数については、「『寄付の金額及び使途を限定されたことから、12台と決定した』」との町側の説明には納得せず、「金額に合わせて、台数を決める方法は、公金を扱う者として、一番やってはいけない行為の一つ」と厳しく糾弾。

 

「1台3270万円の高額な車両の製造台数を決めるのに、それを行ったことは、」「あまりにも乱暴で、無責任な方法ではないか」と詰め寄っています。

常識が通じない!

官製談合の疑いがささやかれる仕様書については、「作成の根拠を確認するために、参考資料について」「提出をお願いしたところ、受託者(※ワンテーブル)からの参考資料のみで、」「他の参考資料は処分したということで提出はありませんでした」と、常識が通じないことを示唆。(※は筆者記)

 

救急車12台のうち2台を「中古車」で納入するよう求めた仕様書の記述にも着目し、「これから『新しく使いやすい救急車を開発製造する』というときに、中古車という発想がどうして出てくるのか理解できない」と、嘆いています。

国見町監査委員による意見書

公平性を欠く「仕様書」

そのうえで、仕様書に示された室内幅の寸法が「受託者から提供された」資料を参考にしていることや、救急車事業が「受託者が事務局をしている国見町民共創コンソーシアムから提案された事業」であることなどから、「受託者がこの仕様書作成に大きく関与しているのではないか」と推察。「公平性について、欠けているのではないか」と強く批判しています。

 

完成した救急車のリース事業については、「事前に需要(市場)調査・アンケート調査などを行い、リース事業が成り立つことを確認する必要があった」と、通常ではあり得ない初動ミスに言及。さらに救急車に設置する約1000万円の医療設備は利用者側が負担することに触れ、「リース事業の成立に関わる大きな障害ではないか」と指摘し、「果たして、高規格救急車のリース事業は、適切だったのか」と、根本的な町側の思考に疑問を示しています。

「町執行部の責任は重い」

結論として、企業版ふるさと納税約4億3200万円が「受託者の暴言により、信頼関係を失われたとして、」「無駄に帰してしまったことについては、大変遺憾」と表明。「町執行部の責任については重いものがある」と結んでいます。

 

監査委員はこの意見書を9月4日に開会した国見町議会9月定例会に提出。これを受け、議会側が今後、調査権限を持つ百条委員会の設置に動くのかどうかが注目されます。また一方、この問題については引地町長から諮問された第三者委員会もすでに調査を進めていて、いずれ示される調査結果の内容と、監査委員の意見との相違にも関心が高まります。

 

それにしても、監査委員の歯に衣着せぬ厳しい意見はどれも的を射ていて、一読して気持ちがいいほどの内容でした。「声に出して読みたい日本語」という書籍がありますが、こちらはぜひ町長に「声に出して読んでもらいたい意見書」としてお薦めします。

赤字のきらやか銀行のせいで黒字の仙台銀行まで買い叩かれてしまう持ち株会社の悲哀。

金融庁が入居する霞が関コモンゲート西館 著作者:Rs1421

きらやか銀行に3度目の公的資金

金融庁は9月1日、業績悪化が続く山形市きらやか銀行の財務基盤を強化するため、同行の親会社にあたる「じもとホールディングス(HD)」に180億円の公的資金を注入すると発表しました。じもとHDは仙台市に本社を置く金融持ち株会社で、同行のほか仙台銀行などを傘下に収めています。

 

今回の公的資金注入は、コロナ禍で打撃を受けた地域経済を支えるための国の「コロナ特例」で、実施されるのは全国で初めてとなります。じもとHDは調達した資金をきらやか銀行を通じてコロナ禍にあえぐ中小企業への貸し出しなどに充てるとしていますが、同行はリーマンショック後の2009年と東日本大震災後の2012年にも合わせて300億円の公的資金を受け入れていて、このうち09年分の200億円の返済期限が来年に迫っています。

 

私のような素人はきらやか銀行に、「よその心配よりもまずは自分の心配をすべきではないか」と言いたくなってしまいますが、受け入れた公的資金を別の公的資金の返済(優先株などの買戻し)にまわすような自転車操業は許されないのでしょう。いや、できるのかもしれませんが少なくとも発表資料にはそのような使いみちは記されていませんでした。

SBIグループとの関係

今回の公的資金注入を招いたきらやか銀行の業績悪化の要因は、貸付先破綻による不良債権処理の影響が大きいとされています。しかし一部の情報誌は、インターネット金融大手・SBIグループにも原因があるとしています。

 

SBIグループは2020年、第三者割当増資35億円分を引き受ける形でじもとHDと資本業務提携を結び、きらやか銀行仙台銀行を「第4のメガバンク構想」に加えました。当時の説明では、じもとHDから託された有価証券をSBI側が運用し、評価益によって両行の収益力を強化することなどが提携の柱とされていました。今回も公的資金注入に合わせて、SBIは約20億円の追加出資を表明しています。

巨額の有価証券「評価損」

ところがです。開示された資料によると23年3月期の時点で、きらやか銀行が176億円、仙台銀行が135億円の計311億円もの評価損が生じていました。じもとHDの株価は低迷し、前回1株当たり958円だった増資の引受価格は今回、半額以下の371円となりました。

 

3年前の資本業務提携の際、私が記者会見で「議決権17%が35億円で手に入るなら安い買物ではないか」と尋ねたところ、SBIは否定も肯定もせず「現状のPBRが割安だから」と答えるのみでした。今回はさらに株価が下落したところでの増資となり、仮に実施されるとSBIの持株比率はついに節目となる33.3%を超え、33.91%に達し、じもとHDの経営上の拒否権を握る形になります。

内部留保171億円の仙台銀も手中に

これにより、じもとHD本体はもちろん100%子会社のきらやか銀行仙台銀行の経営にもSBIの意向が大きく影響することになり、とくに黒字経営が続く仙台銀行には171億円の内部留保がある(23年3月期末)ことを考えると、「安い買物」どころか「大バーゲン・プライス」になるとさえ言えます。

 

ちなみに、ややひねくれた気持ちで表面だけを眺めると、まるでSBIが委託された有価証券に故意に評価損を生じさせ、じもとHDの株価が下落したところを安く買い叩いたようにも見えます。確かに理論的には可能かもしれませんが、日本の一流企業であるSBIがそんなハゲタカ・ファンドまがいのことをやるはずがないと私は思います。確信は持てませんが、たぶんしないと思います。

 

今後もしSBIが、じもとHDの持ち株比率をさらに高め、非上場化に動くなら別ですが。

 

「値上げしたら儲かりすぎ!復配しまーす!!」→株主「ごっつぁんです!」

(東北電力のプレスリリースより)

値上げで過去最高益&配当復活

東北電力は2024年3月期の連結最終損益が、前年度の1275億円の赤字から過去最高となる1400億円の黒字にV字回復する見通しだと発表しました。しかも前年度0円(無配)だった配当を年間15円に復配(予想)。…これ、おかしくないですか。東北電力「あれ?値上げしたら儲かりすぎちゃったぞ!だったら復配しまーす!!」→株主「ごっつぁんです!」…って、ありですか?

渋々受け入れた値上げ…なのに

東北電力は去年11月、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などでコストが増加しているとして高圧以上の企業向け電気料金を引き上げています。また家庭向け電気料金を値上げする際には仙台市内で公聴会を開き、消費者から「納得できない」などの厳しい意見を受けながらも今年6月、国の認可どおり料金の値上げに踏み切りました。

 

4月に前年度決算を発表した時点では「まだ規制料金値上げの審査が継続していることなどから合理的な算定が困難」として今年度通期の業績と配当予想を未定としました。燃料費調整額のタイムラグもあるのでしょうが、もしこの時点で改定後料金での試算結果がわかっていたなら、消費者はおとなしく値上げを受け入れていたでしょうか。

 

東北電力の樋口社長は会見で「財務状況が悪化しており、危機的状況は続いている」と話したそうです。実際そうなのでしょうし、私も今回の値上げについては仕方がないと思いました。ただその結果「大幅な黒字になりそうだから配当を復活させます」と言われたら、消費者は「なぜ値下げに使わないんだ」と反感を覚えませんか。

「旧一電」の矜持はどこへ

会社は株主のものだという理屈はあります。しかし旧一般電気事業者は公益性が高く、国からも特別扱いを受けて現在に至りました。一般的な株式会社とはそもそもの成り立ちが異なります。消費者が負担を強いられる値上げ分が余剰利益を生み出し、最終的に株主に還元されてしまうのでは、企業の信頼性を毀損することにつながります。

大人の事情がマスコミを黙らせる?

料金値上げの話が出た際、「生活が苦しくなる」として市民の声を取り上げていたテレビや新聞は、今回の黒字転換見通しと配当復活について淡々と発表内容のみを伝えています。たとえその裏にCMや広告出稿、あるいは資本関係など大人の事情があるにせよ、消費者側に立つべきマスコミがこれにほっかむりするようでは悲しくなります。

IBC岩手放送の個人情報漏えいについて考える

(23/07/08 smartFLASHより※画像は一部加工してあります)

現役アナによる情報漏えい

IBC岩手放送の風見好栄(よしえ)アナウンサーが社員の住所録を本人の同意を得ずに漏えいし、「減俸1カ月」と「始末書」の処分を受けたとFLASHが報じました。社内からは「処分の内容が甘すぎる」などの声が出ているということです。

 

詳しく読んでいくと、岩手放送ではもともと個人情報に関する管理ルールがあいまいだったようにも思われます。今回の処分が適切かどうかは私たち外部の人間が知るところではありませんが、あいまいなルールのもとで処分されてしまうのは、やや気の毒な感じもします。

目的は「夫の選挙」のため?

記事にあるように風見アナの夫・野田尚紀さんは盛岡市に本社を置く番組制作会社「フロムいわて」を経営されています。震災後にできた比較的新しい会社ですが、良質なテレビ番組などを次々手掛けていて、私も直接の面識は無いものの野田さんの作品にはかねてから注目していました。今年1月には盛岡城跡公園で自動運転EVの実証実験を行うなど、映像以外の分野にも活躍の幅を広げています。

 

こうしたなか野田さんは、今年8月に行われる盛岡市議選に立候補を予定されているようで既に後援会も立ち上がっています。もし仮にこの記事に書かれているように、風見アナが夫である野田さんの選挙のために社員住所録を漏えいさせたとしたなら、それはちょっと残念ですね。

信頼の回復を急ぐしかない

選挙が近づき多忙を極める時期ですが、まずは岩手放送社内からの信頼を取り戻すことが急務と思われます。そして岩手放送もまた、社内のみならず社外から入手した個人情報の取り扱いなどについて、これを機にあらためて点検すべきと思います。余計なお世話かもしれませんが。

投票率向上にはぜひ「拒否票」の創設を

(23/07/07 河北新報より)

インセンティブでは上がらない

大学構内に設けられた期日前投票所や、各地をバスで巡回する移動投票所、さらには飲食店と連動した選挙割などなど。投票率向上を図るため全国的に広がるこうした取り組みについて、仙台市議選を控えた市選管が「やらない」としていることを7月7日の河北新報は『消極姿勢際立つ』と朝刊1面で批判しました。

 

これはあくまでも個人の見解ですが、市選管の判断は正しいと思います。仙台市の場合、投票所は必要にして十分な数が各地に設置され、何より目先のインセンティブ投票率が上がる保証はないからです。だからといって市民が政治や選挙に無関心だとは思いません。投票率が下落傾向を抜け出せないのは、政治に対する「あきらめ」が原因ではないでしょうか。

「拒否票」の創設で選挙が変わる

叱られるのを承知で書きますが、選挙の投票率を上げるには「拒否票」の創設が有効だと思っています。「この人だけは当選させたくない」という候補者にNOを突き付ける拒否票。私が勝手に思いついた造語です。開票の際、得票数から拒否票数を差し引いたものが選挙結果となる仕組みで、落選運動のひとつとも言えます。

 

現状の選挙制度では、候補者名や政党名(比例の場合)が書かれた票だけが有効票となり、たとえ共感できない候補者や政党ばかりだったとしても、何も書かれていない白票や規定外の票を投じることは最終的に無効票扱いになってしまいます。つまり、いくら抗議のつもりでそのような票を投じたとしても、その思いは投票率に反映されるばかりで選挙結果には微塵も影響しません。

 

一方で、無効票を投じたのは「わざわざ投票所に出かける手間を惜しまなかった人たち」であり、無関心というよりはむしろ選挙に関心のある層に含まれるとも考えられます。こうした、政治に対する不満など選挙結果に表れない「声なき声」を反映できるような選挙制度に変えられれば、有権者の「あきらめ」にも変化が起きるのではないかと考えます。

「NO」と言える有権者

当選にふさわしいと思う候補者に「〇」を付ける(名前を書く)ことしかできない現状の投票に加えて、ふさわしくないと思う候補者に「✕」を付けられる拒否票も持つことができれば、今まで仮に問題を起こしても組織票に守られてきたような候補者には、有権者のNOを票数として示すことで反省を促したり、場合によっては選挙結果を覆すことも可能となります。

 

もっともこのような考えに対し「選挙制度を歪めるものだ」と批判の声も出るでしょう。しかし現状の選挙制度が問題を抱えていることは明らかであり、多くの国民が選挙の仕組みに不満を持っていることも事実です。代表制民主主義の健全性を保つためにも、意思決定を委ねる人物を選ぶ際に有権者の拒否権は担保されるべきではないでしょうか。

 

さらに「無投票当選」を回避するため、たとえ立候補届け出の締め切り時点で定数を超えていなくても選挙を実施し、得票数が拒否票数を上まわっていれば当選できる仕組みになるのが理想です。

「運用の工夫」でさらなる効果も

実施の際にはさまざまな運用方法も考えられます。すべての有権者投票権と拒否権を各1票ずつ持ったり、あるいは投票実績3回につき拒否権1票が付与されたりするなど、運用法を調整することで投票率のさらなる向上にもつながることが期待できます。

 

問題はこれがすべて私個人の妄想に過ぎないこと。そう考えると悲しいのですが、それでもいつか拒否票が創設されることを私は心から願っています。