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国見町×ワンテーブル=「疑惑の救急車12台」 町側のずさんな事業計画に監査委員が激おこ!

完成した救急車はどこへ向かうのか(画像・Google )

監査委員が異例の批判

人口8000人の福島県国見町が、企業版ふるさと納税で寄付された約4億3200万円を原資に高規格救急車12台を研究開発し、全国にリース事業を展開しようとして頓挫した、いわゆる「疑惑の救急車」問題について、町の監査委員が異例ともいえる厳しい表現で町側の事業計画を批判しました。

 

これは国見町の2022年度各会計決算を審査した監査委員が、A4版10ページあまりの審査意見書の中に示したもので、文書の半分に迫る4ページ約6,000文字を救急車事業への批判に割いています。

ずさんな事業計画

意見書ではまず救急車事業が、4億円を超える事業でありながら、監査委員が町側に説明を求めたところ「事業計画書が作成されていませんでした」と明かし、議会に対する説明も「すべて口頭のみで行った」と、町側のずさんな事業計画を暴露。「説明資料なしで、どのように庁内の意思疎通を図られたのでしょうか。町民へどのように説明したのでしょうか」と、出だしから町側の姿勢を突き放しています。

研究開発方針の矛盾

次に研究開発について、「同じ仕様書で、12台も製造する必要があったのか」と疑問を呈し、「研究開発事業の名称を掲げている以上、」「例えば、A仕様で4台、B仕様で4台、C仕様で4台とすれば、採用枠も広がるし、幅広く意見を求めることができます」と、ていねいに具体例を挙げて町側の研究開発方針の矛盾を指摘。

 

「1回意見を聞いて、6台作り、1年使用していただいて、さらに2回目の意見を聞いて、6台作れば、1回目より2回目は良いものを作れる可能性があり、より質の高い開発が期待できるのではないか」と、町側の考えが浅いとばかりにたたみ掛けています。

「あまりにも乱暴で無責任」

12台という救急車の台数については、「『寄付の金額及び使途を限定されたことから、12台と決定した』」との町側の説明には納得せず、「金額に合わせて、台数を決める方法は、公金を扱う者として、一番やってはいけない行為の一つ」と厳しく糾弾。

 

「1台3270万円の高額な車両の製造台数を決めるのに、それを行ったことは、」「あまりにも乱暴で、無責任な方法ではないか」と詰め寄っています。

常識が通じない!

官製談合の疑いがささやかれる仕様書については、「作成の根拠を確認するために、参考資料について」「提出をお願いしたところ、受託者(※ワンテーブル)からの参考資料のみで、」「他の参考資料は処分したということで提出はありませんでした」と、常識が通じないことを示唆。(※は筆者記)

 

救急車12台のうち2台を「中古車」で納入するよう求めた仕様書の記述にも着目し、「これから『新しく使いやすい救急車を開発製造する』というときに、中古車という発想がどうして出てくるのか理解できない」と、嘆いています。

国見町監査委員による意見書

公平性を欠く「仕様書」

そのうえで、仕様書に示された室内幅の寸法が「受託者から提供された」資料を参考にしていることや、救急車事業が「受託者が事務局をしている国見町民共創コンソーシアムから提案された事業」であることなどから、「受託者がこの仕様書作成に大きく関与しているのではないか」と推察。「公平性について、欠けているのではないか」と強く批判しています。

 

完成した救急車のリース事業については、「事前に需要(市場)調査・アンケート調査などを行い、リース事業が成り立つことを確認する必要があった」と、通常ではあり得ない初動ミスに言及。さらに救急車に設置する約1000万円の医療設備は利用者側が負担することに触れ、「リース事業の成立に関わる大きな障害ではないか」と指摘し、「果たして、高規格救急車のリース事業は、適切だったのか」と、根本的な町側の思考に疑問を示しています。

「町執行部の責任は重い」

結論として、企業版ふるさと納税約4億3200万円が「受託者の暴言により、信頼関係を失われたとして、」「無駄に帰してしまったことについては、大変遺憾」と表明。「町執行部の責任については重いものがある」と結んでいます。

 

監査委員はこの意見書を9月4日に開会した国見町議会9月定例会に提出。これを受け、議会側が今後、調査権限を持つ百条委員会の設置に動くのかどうかが注目されます。また一方、この問題については引地町長から諮問された第三者委員会もすでに調査を進めていて、いずれ示される調査結果の内容と、監査委員の意見との相違にも関心が高まります。

 

それにしても、監査委員の歯に衣着せぬ厳しい意見はどれも的を射ていて、一読して気持ちがいいほどの内容でした。「声に出して読みたい日本語」という書籍がありますが、こちらはぜひ町長に「声に出して読んでもらいたい意見書」としてお薦めします。