もぞらもぞら

東北のもぞもぞする話題を考察

官民連携「癒着」なのか、ただの「先走り」なのか

(国見町が作成した救急車事業の仕様書)

公告前に発注された「救急車」

先ごろ河北新報が報じた記事が事実なら、官民の「癒着」を示す決定打となりそうです。

 

人口約8000人の福島県国見町に寄せられた4億3200万円もの企業版ふるさと納税。その寄付金を原資とした官民連携の救急車「研究開発」事業。町が委託先の公募を行ったのは2022年11月。ワンテーブルが委託先に選ばれたのが翌12月。ところが、なぜか公告の8カ月も前にワンテーブルは救急車を発注済みだった…

 

記事によると、救急車の製造業者ベルリングとワンテーブルが契約したのは22年2月末で、国見町に最初の企業版ふるさと納税3億5700万円が寄付された3日後のこと。もちろん公募型プロポーザルの募集公告よりはるかに先で、町が「官民共創コンソーシアム」を立ち上げる直前でした。

官にも民にも都合のいい「事務局」

コンソーシアムの設立にあたりワンテーブルは国見町から事務局を受託しましたが、仮に記事の通りだとすると、その時点で既に救急車事業のプランが進んでいて、町もその実現のためにコンソーシアムを立ち上げた可能性さえ浮上します。同社が事務局に就くことは、町にとっても寄付企業にとっても都合がよかったのかもしれません。

 

引地町長は第三者委員会に調査を託す方針を示し、これとは別に国見町議会も百条委員会による調査を検討するそうですが、記事によるとワンテーブルと寄付企業は、町の意思決定より「先に」救急車事業の準備を進めていたことになるため、少なくともその矛盾は調査によって解明される必要があります。

「詳細過ぎて」墓穴を掘った仕様書

救急車事業の委託先を公募した当時、国見町は選考の基準となる仕様書を示しました。そこには車両のスペックなどが14ページに渡って記されていて、多くはベルリング製の既存の救急車と装備が重なります。詳細な指定は仕様書としては過剰ともいえ、まるで他社の参入を妨げる狙いがあったようにも見られます。

 

とくに「研究開発」と銘打ちながら、新車10台のほかに「中古車2台」の救急車を納入せよと記された不自然な条件は仕様書の最大のナゾでした。記事によれば、最初の寄付があった21年度に新車7台、その後計7500万円が寄付された翌22年度に中古2台を含む5台が発注されていて、いずれも公募前のことになります。

「救急車ありき」のストーリー

この事実から考えられるのは、企業版ふるさと納税の金額から救急車事業の規模(台数)が決められたのではなく、ベルリング側が調達できる台数から企業版ふるさと納税の金額が決まったのではないかということです。これはもちろん妄想ですが、そう考えると唐突な「救急車12台」という事業規模も納得できます。

避けられない「DMM.com」の調査

国見町議会の議事録によると寄付は計3社から寄せられていて、いずれも匿名とのこと。河北新報は3社がベルリングの親会社グループだとしていて、ウェブサイトをたどると同社はDMM.comの子会社であることがわかります。第三者委や百条委が設置された場合、両面調査の原則からDMM.comの意向も調べる必要があると思われます。

本丸とすべきは「官製談合か否か」

と、ここまで書いておきながら、まるでちゃぶ台返しのようですが、国見町の疑惑はまだ何の違法性の確認も、事件化もされていません。上記に示した一連の出来事も、もし民間だけなら「多少先走った」「やり過ぎた」程度で済む話だとも言えます。

 

問題は、これが官と民の連携事業で起きていて、官製談合の疑いがぬぐい切れないこと。連日の河北新報の報道を見ると何かの動きを掴んでいるようにも思えますが、しょせん一読者の私にはまったくわからないのです。