もぞらもぞら

東北のもぞもぞする話題を考察

投票率向上にはぜひ「拒否票」の創設を

(23/07/07 河北新報より)

インセンティブでは上がらない

大学構内に設けられた期日前投票所や、各地をバスで巡回する移動投票所、さらには飲食店と連動した選挙割などなど。投票率向上を図るため全国的に広がるこうした取り組みについて、仙台市議選を控えた市選管が「やらない」としていることを7月7日の河北新報は『消極姿勢際立つ』と朝刊1面で批判しました。

 

これはあくまでも個人の見解ですが、市選管の判断は正しいと思います。仙台市の場合、投票所は必要にして十分な数が各地に設置され、何より目先のインセンティブ投票率が上がる保証はないからです。だからといって市民が政治や選挙に無関心だとは思いません。投票率が下落傾向を抜け出せないのは、政治に対する「あきらめ」が原因ではないでしょうか。

「拒否票」の創設で選挙が変わる

叱られるのを承知で書きますが、選挙の投票率を上げるには「拒否票」の創設が有効だと思っています。「この人だけは当選させたくない」という候補者にNOを突き付ける拒否票。私が勝手に思いついた造語です。開票の際、得票数から拒否票数を差し引いたものが選挙結果となる仕組みで、落選運動のひとつとも言えます。

 

現状の選挙制度では、候補者名や政党名(比例の場合)が書かれた票だけが有効票となり、たとえ共感できない候補者や政党ばかりだったとしても、何も書かれていない白票や規定外の票を投じることは最終的に無効票扱いになってしまいます。つまり、いくら抗議のつもりでそのような票を投じたとしても、その思いは投票率に反映されるばかりで選挙結果には微塵も影響しません。

 

一方で、無効票を投じたのは「わざわざ投票所に出かける手間を惜しまなかった人たち」であり、無関心というよりはむしろ選挙に関心のある層に含まれるとも考えられます。こうした、政治に対する不満など選挙結果に表れない「声なき声」を反映できるような選挙制度に変えられれば、有権者の「あきらめ」にも変化が起きるのではないかと考えます。

「NO」と言える有権者

当選にふさわしいと思う候補者に「〇」を付ける(名前を書く)ことしかできない現状の投票に加えて、ふさわしくないと思う候補者に「✕」を付けられる拒否票も持つことができれば、今まで仮に問題を起こしても組織票に守られてきたような候補者には、有権者のNOを票数として示すことで反省を促したり、場合によっては選挙結果を覆すことも可能となります。

 

もっともこのような考えに対し「選挙制度を歪めるものだ」と批判の声も出るでしょう。しかし現状の選挙制度が問題を抱えていることは明らかであり、多くの国民が選挙の仕組みに不満を持っていることも事実です。代表制民主主義の健全性を保つためにも、意思決定を委ねる人物を選ぶ際に有権者の拒否権は担保されるべきではないでしょうか。

 

さらに「無投票当選」を回避するため、たとえ立候補届け出の締め切り時点で定数を超えていなくても選挙を実施し、得票数が拒否票数を上まわっていれば当選できる仕組みになるのが理想です。

「運用の工夫」でさらなる効果も

実施の際にはさまざまな運用方法も考えられます。すべての有権者投票権と拒否権を各1票ずつ持ったり、あるいは投票実績3回につき拒否権1票が付与されたりするなど、運用法を調整することで投票率のさらなる向上にもつながることが期待できます。

 

問題はこれがすべて私個人の妄想に過ぎないこと。そう考えると悲しいのですが、それでもいつか拒否票が創設されることを私は心から願っています。