
幕引きを急ぎたい国見町
河北新報の一連の報道を受け、福島県国見町の引地真町長がきのう(3月27日)、町民に対する「お詫び」の文書を発出しました。ワンテーブルの島田氏に強く抗議したうえで、信頼関係が崩れたとして「ワンテーブルとの包括連携協定の合意解約」「国見町官民共創コンソーシアム業務の協議解除」「国見町地域力創造アドバイザリー業務の協議解除」「高規格救急自動車研究開発等業務の変更契約と年度内完了」を決めたということです。
「行政のトップとして責任を強く感じ、深く反省するとともに、改めてお詫び申し上げます。今後は、各地区において住民説明会を開催し、ご説明申し上げる予定としております」とのことですが、当選1期めの引地町長としては来年に選挙を控えるなか、さぞ肝を冷やしているのではないでしょうか。心中お察ししますが、とはいえ町長ご自身が強く推進してきた事業です。住民に「説明する予定」ではなく、すぐ会見を開いて全てを明らかにしたほうが延焼を食い止められると私は思います。
煮え切らない議会を黙らせた町長
とくに「救急車」については複数の議員から「なぜ国見町が研究開発に関わるんだ」「地元の伊達消防組合とは打合せしたのか」「完成した救急車をどうするつもりだ」といった、まっとうな質問が次々と出され、担当課も答弁に四苦八苦していたことが定例会の議事録からわかります。町の説明に納得しない議員たちを最終的に黙らせたのは、町長ご自身の答弁であったことを隠すわけにはいきません。
以下に議事録から引地町長の議会答弁を引用します。
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「もともとこの事業は、官民コンソーシアムという事業の関連の一つなんです。この官民コンソーシアム事業は、民間企業と町が一緒にいろんなことに取り組む事業で、町にすればまちづくりに役立てましょうということです」
「13社の企業がこの官民コンソーシアムに入っています。その中で、資金を持っている企業は、国見町に企業版ふるさと納税をします。一方、資金はないけれども技術がある企業は、国見町に納税されたふるさと納税を原資に、技術革新を進め、自立するという流れを作ります」
「今回の件は、コンソーシアムに関係する企業の1社から、企業版ふるさと納税がありました。その後、よそにはない高規格の救急車を開発している防災関係の企業から、国見町に寄付された企業版ふるさと納税を原資にしたいので活用させてほしいと申し出がありました。申し出をしたのは、福島県内に事業所を持つ企業です」
「国見町は、申し出のあった企業に企業版ふるさと納税を原資に資金を提供する、委託料として支出することにしました」
「国見町のメリットは何かということですが、お金がどうのこうのとずいぶん、企画調整課長は答弁に四苦八苦していますが、町は寄付された企業版ふるさと納税を公金として処理をする、支出の際はしっかりとチェックすることは当然ですが、この事業で国見町にいくら入ってくるかといったことではなく、国見町が一番欲しいのは、官民コンソーシアムに参加した13社と連携して、高い技術力を持った様々な分野の企業を町が仲立ちして結びつける」
「その結果、製品が完成し、評判が上がれば、その製品開発には企業版ふるさと納税を国見町が活用して支援したと、国見町が関わっていると全国にアピールすること、これが国見町にとって官民コンソーシアムという事業の一番の目的なんだと思います」
「国見町が一番欲しいのは、企業と連携して国見町を宣伝する、国見町の名前を広めること、ネームバリューを上げることです。これが一番のメリットです。国見町と企業が一緒に開発した製品ですよという名前の打ち出しが欲しいのです。官民コンソーシアム事業というのは、かなり面白い事業なんだろうなと思います」
「7月だったでしょうか、プロトタイプの救急車を見たんですが、通常の救急車よりも車内での作業がしやすい、装備もグレードアップしたものを入れ込んでいることを見ています」
「国見町は営業をしません。しませんが、この救急車は国見町と企業が一緒に開発したものですよ、ということを企業にアピールしてもらって国見の名前を広めることが、この事業の目的だということを理解いただかないと、議論は平行線のままなんだろうと思います。よろしくお願いします」
2022年9月9日/国見町議会9月定例会
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寄付の受け皿?官民コンソーシアム
企業版ふるさと納税は、自治体に寄付した企業の税負担を軽減する一方、寄付した企業に対し自治体が経済的な見返りを与えることを禁じています。ところが町長の答弁を真に受けると、企業版ふるさと納税の寄付金を官民コンソーシアムに関わりのある企業間で循環させるつもりだったのではと勘ぐってしまいます。
そんなことはないと思いますが、そのような言い方にも受け取れます。少なくとも救急車事業は町が発案したものではなく企業側から提案されたと述べていて、これでは担当課が返答に窮するのも当然だろうと納得しました。
奇しくも広まった「国見町の名前」
今回、町に寄付した企業と、救急車を開発する企業の関係性を(噂以外では)知りませんので、果たしてこれが見返りに当たるのか私には不明ですが、行政のトップである町長が公募型プロポーザルの入札実施前に応札(予定)側の救急車を見たり、コンソーシアム側の考えを議会で代弁するような行為は慎むべきだったのではないでしょうか。
奇しくも「企業と連携して国見町を宣伝する、国見町の名前を広める」という狙いは別の形で達成できそうですけどね。
今後、河北新報はワンテーブルから国見町にフォーカスを切り替えるのか、それとも福島民友などが地の利を生かし独自の抜きネタで挽回してくるのか。暇をもてあましている一般読者としてはそちらにも目が離せません。